心も軽くなって
優しい気持ちになれる
そんな居心地の良さを

若女将と呼ばれるようになるなんて、想像もしてなかったです。歌手としていろんな場所でコンサートをしていましたが、飯能という場所は、ここに来るまで知らなかったんですよ。そんな場所で旅館業に関わることになるなんて。
あれは東日本大震災が起きてすぐだったと思います。まだ日本が暗く沈んでいて、旅行やレジャーから足が遠のいていたとき。そんな時に、コンサートを大松閣で開いたんです。たくさんのお客さまがいらっしゃって、皆さん幸せそうな笑顔がまぶしかった。なにより若旦那を筆頭に、お客さまを迎えるスタッフみんなもキラキラしていた。「旅行業っていいな」と初めて感じた瞬間でした。

若女将、といっても決まった形があるわけじゃないので、手探りでやってます。というか、私らしく、そのままの私でやってます。だから、いつも歌と一緒。宴会やご家族でのお食事、時にはお子さまが泣いていたりすると、歌わせていただきます。お客さまにぴったりな、その時に聴いていただきたい歌を。ある時、「もう一緒に来ない！」とケンカされていた親子連れの方に、歌をプレゼントしたことがあります。少しずつ表情が柔らかくなっていって、最後は涙を流してくださった。お帰りの際には「また一緒に来ます」と言っていただけたんです。ピンチを感動に、歌が変えてくれた。だから私は私らしく、歌う若女将でやっているんです。

『ハミング』は、新しくオープンした一棟貸しの宿泊施設。時々私たちも利用します。夜はすぐ近くで鹿の声が聞こえたり、朝は太陽の暖かさを全身で感じられたり。良い場所です。清掃などは地元の方にお願いしていますが、ここを好きになってくださって、とても丁寧に気持ちいい場所にしてくださいます。つい好きな歌を口ずさんじゃうくらい、居心地がいいんですよ。『ハミング』って名前の通りの場所にしてもらっているな、と思います。歌は気持ちを動かしてくれるから。『ハミング』も感動してもらえる場所にしたい。そして飯能を好きになってもらいたい。私が新しい故郷として、飯能を大好きになったように。そして、私も多くの人に感動して喜んでもらえるような若女将であり続けたいなと思っています。